●胃食道逆流症 (GERD: Gastroesophageal Reflux Disease) について教えてください。
胃食道逆流症の症状としては、胸やけ、逆流(酸の逆流感)、前胸部痛、悪心、呑酸(口の中に酸が上がってくる感覚)、嚥下困難、慢性的な咳や喉の違和感、耳鳴り、歯痛などがあります。
胃食道逆流症(GERD)には、逆流性食道炎(reflux esophagitis)や非びらん性逆流症(NERD)が含まれ、はっきりした逆流所見がなくとも同様な症状を感じる機能性ディスペプシアなどがあります。
逆流性食道炎の発症機序としては、下部食道括約筋(LES)圧の低下、一過性弛緩、急激な腹圧上昇などによる胃酸の食道への逆流により発生すると考えられています。リスク要因としては、食道ヘルニアの存在(骨粗鬆症による前弯姿勢なども関連)、高BMIまたは肥満、胃粘膜萎縮がないか軽い、生活習慣の欧米化、HP感染率の低下などが挙げられます。
●胃食道逆流症は内視鏡検査をしなくても治療可能ですか?
胃食道逆流症が疑われる場合、以下のような場合には内視鏡検査が推奨されます。
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嚥下困難、体重減少、出血、貧血、持続的な嘔吐などの警戒すべき症状がある場合。
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内服薬など初期治療に対して症状が改善しない場合。
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長期間にわたり症状が続く場合。
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50歳以上、胃がんの家族歴がある場合などの高リスクグループ。
逆流性食道炎は典型的な症状がある場合、内視鏡検査を行わずに治療を開始することが可能です。しかし、治療に反応しない場合や警戒すべき症状がある場合には、内視鏡検査を行って原因を明確にし、適切な生活習慣の改善と薬物療法を行うことが重要です。
生活習慣の改善としては、食事を工夫して高脂肪食やスパイシーな食べ物、カフェイン、アルコールを避ける、寝る前の2-3時間は食事を控える、適切な体重管理や減量(肥満は増悪因子)、頭を高くして寝るなどがあります。
●食道癌 (扁平上皮癌) の危険因子は?
喫煙と飲酒が最大のリスクです。特に、喫煙は男性で4.45倍、女性で1.57倍、飲酒は男性で4.03倍、女性で1.42倍にリスクを高めるというデータがあります。飲酒かつ喫煙する男性は通常の17倍のリスク、女性は通常の7.26倍のリスクがあるとされます。
一般的に、食道がんのリスク要因としては、55歳以上の男性、喫煙、飲酒、果物や野菜の摂取低下、やせ型体形、熱い食べ物好み、濃い酒の嗜好、アルコール依存症、アルコール分解経路に関係するALDH2*2 (不活性型)、ADH1B*2 (高速型) の遺伝子型、飲酒で顔が赤くなる、赤血球MCV値が高い、食道がんの家族歴、頭頸部がんの既往(特に下咽頭癌)、内視鏡でヨード不染多発、上部消化管メラノーシスなどがあります。
●食道癌(扁平上皮癌)の内視鏡所見は?
食道癌 (扁平上皮癌) の内視鏡所見 (白色光) には、以下の特徴があります:
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隆起性病変
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表面不整
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異常血管パターン
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白斑
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びらん・潰瘍
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血管透見性の消失
これらの所見を通じて早期発見し、適切な治療を行うことが可能です。定期的な検査と適切な診断が治療成功のために重要です。
癌の形態には、隆起型、平坦型(浅い隆起~陥凹を含む)、陥凹型などがありますが、早期の場合は凹凸が少ないため、以下のような特殊内視鏡検査が重要です:
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特殊染色:ヨード法、トルイジンブルー併用の二重染色法、酢酸法
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特殊光観察:NBI (Narrow Band Imaging)、BLI (Blue Laser Imaging)
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拡大観察による血管構造:異常血管パターン
生検による組織診断が重要です。特に、癌の深さ(深達度)はリンパ節転移などの予後判定に重要であり、早期発見がそのためにも重要です。経口バリウム造影では見つけにくいため、内視鏡検査がほぼ必須です。
食道の壁は内腔側から次のように分けられる構造です:
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粘膜上皮(EP、m1)
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粘膜固有層(LPM、m2)
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粘膜筋板(MM、m3)
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粘膜下層(SM、sm1~3)
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固有筋層(MP)
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食道外膜(Ad)
癌の壁深達度が粘膜下層までにとどまっているものを食道表在癌(m1~sm3)と言います。一方、食道早期がんとは癌の壁深達度が粘膜層(粘膜下層ではない)までにとどまり、かつリンパ節転移がないもの(組織的診断名)を指します。組織診断が必須ですので、臨床診断名では早期のものを食道表在癌(O-I/II/III)と呼びます。
実際には、深達度が粘膜筋板に接するT1a-MM(m3)であっても10%強のリンパ節転移が認められるとされ、食道表在癌のうちでもごく初期のものに内視鏡的切除の適応は限られます。それ以上のものには、手術療法、化学療法、放射線療法などが選択または併用されます。
●バレット食道およびバレット腺癌(食道円柱上皮癌)について
胃酸の逆流による慢性炎症により食道の下部粘膜が正常な扁平上皮から円柱上皮(胃の粘膜と同じ)に置き換わる状態です。これは長期間の胃酸逆流による刺激により発生します。
バレット食道自体は無症状のことが多いですが、逆流性食道炎に関連する症状(胸やけ、逆流、呑酸、胸痛など)が現れることがあります。リスク要因としては、長期間の逆流性食道炎、喫煙、肥満、高齢、男性などがあり、食事の改善、体重管理、禁煙などが重要です。
バレット腺癌は、バレット食道の背景に発生する腺癌です。バレット食道の一部が悪性化し、食道腺癌となるリスクが高まります。食道がんの中でも食道腺癌の頻度が何倍~30倍に上がるとされ、定期的な内視鏡観察が必要です。欧米人に多く、わが国ではもともと少ないとされますが、食生活の欧米化とともに増加傾向にあります。手術以外に治療が困難とされます。
●胃潰瘍の原因は何が多いですか?
胃潰瘍の主な原因は、非ステロイド性抗炎症薬 (NSAIDs) の使用とヘリコバクター・ピロリ感染です。 腰痛などでNSAIDsを多用したり連用する場合は注意が必要です。また、ヘリコバクター・ピロリ感染者は除菌が望ましいと思われます。これらに加えて、ストレス、アルコール、喫煙、遺伝的要因などが潰瘍の形成に寄与します。予防と治療のためには、これらのリスク要因を理解し、必要に応じて生活習慣の改善や適切な医療機関での診断と治療を受けることが重要です。
●胃癌の自覚症状やリスク因子について
無症状の人もいれば、腹痛、食欲不振、吐き気、腹満感などがありますが、慢性胃炎やピロリ菌感染でも同様な症状があるため、胃がんに特徴的な症状はありません。進行がんで狭窄症状が出たり、痛みや黒色便が出る場合もありますが、潰瘍等でも認められる所見です。さらに進行すると、腹膜播種や腹水貯留、左鎖骨リンパ節触知(転移)も出現します。
胃がんのリスクとしては、本邦に多い塩分の多い食事、果物や野菜の摂取量の少ない人、肉や魚の焦げ(ニトロソアミン)の摂取、ピロリ菌感染者、家族歴、萎縮性胃炎、腸上皮化生のある場合などです。特に食塩摂取量とピロリ菌感染の有無には注意が必要です。
●内視鏡検査では鎮静剤は使いますか?
内視鏡治療における鎮静剤の使用は、必要性と合併症のリスクに応じて行います。経鼻内視鏡検査では、経口内視鏡検査と異なり、まず鎮静剤は必要ありません。大腸内視鏡検査では、鎮痛剤注射を用いていますが、痛みなどの症状が強い場合は麻薬性の鎮痛剤の追加を行っています。さらに事前に要望があれば、検査後2時間の安静、自動車運転禁止でベンゾジアゼピン系の鎮静剤(睡眠薬に近いもの)投与も検討します。
呼吸抑制、低血圧などの過鎮静リスクがあり、心肺機能、既往症のある方や不明な方では使用できない場合もあります。使用にはリスク説明と同意書が必要です。鎮静剤を少量ずつゆっくりと静脈注射で行い、鎮静中および治療中は、患者の呼吸、心拍、酸素飽和度、血圧を継続的にモニタリングし、必要に応じて酸素を供給します。
治療後のケアとして、治療終了後、患者の覚醒を確認し、鎮静剤の効果が完全に消えるまで観察します。重篤な心肺疾患を持つ患者などは、鎮静剤の使用が禁忌となる場合があります。
回復時間:鎮静剤の効果が完全に消えるまでには個人差があるため、十分な観察時間が必要です。覚醒後、患者に安全な移動手段を確保(運転禁止、付き添い人の確保)が必要です。
鎮痛剤鎮静剤にかかわらず、検査後ガスが溜まって一時的に痛みに感じる方がいます(多くはありません)が1日で改善します。
●胃のポリープは悪性が多いですか
胃のポリープの多くは良性ですが、一部の種類(特に腺腫性ポリープ)は悪性化するリスクがあります。そのため、定期的に内視鏡検査を受け、観察・生検など医師に相談してください。
胃のポリープの主な種類には以下のものがあります:
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過形成性ポリープ: 胃の粘膜が過剰に増殖したもの。通常は良性で、悪性化するリスクは低い。しかし、大きなポリープや多発性の場合、まれに悪性化することがあります。
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腺腫性ポリープ: 腺細胞の異常増殖によるもの。このタイプのポリープは前がん病変とされ、悪性化のリスクが比較的高いです。特に大きなポリープや異型度が高いものはがんに進行する可能性があります。
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胃底腺ポリープ: 胃の底部にある腺から発生するポリープ。通常は良性で、悪性化のリスクは非常に低いとされます。しかし、家族性大腸腺腫症(FAP)と関連する場合はリスクが増加します。
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炎症性線維ポリープ: 炎症による線維組織の増殖。良性であり、悪性化することはほとんどありません。
内視鏡検査で胃のポリープが発見された場合、ポリープの大きさ、数、形状に応じて、生検・病理検査で経過観察または切除を選択します。
胃の癌は、ポリープ(隆起型)はむしろ少なく、陥凹型(潰瘍型)が胃がんの最も一般的な形態であり、胃がん全体の約60〜70%を占めます。 隆起型(ポリープ型)は胃がん全体の約10〜20%を占めます。平坦型(フラット型)は、比較的少なく、胃がん全体の約10〜20%を占めますが、平坦型は胃粘膜とほぼ同じ高さにあるため、内視鏡検査での発見が難しい場合があります。内視鏡検査では、色調の変化や表面の凹凸、領域性のある区域として認識できるか、血管構造のパターンなどが胃がんの発見に重要とされます。
●ピロリ菌について教えてください。
ヘリコバクター・ピロリ (Helicobacter pylori) は胃の粘膜に生息する3-5本の鞭毛を持つらせん型の微好気性・グラム陰性桿菌です。ウレアーゼという酵素で尿素を分解してアンモニアを産生し、菌周囲の胃酸を中和して生息しています。口腔内や糞便中からも検出され、経口(水系感染)すると考えられており、小児期に感染し持続感染を続けると考えられています。細胞毒性があり胃粘膜障害を起こすため除菌療法が認められています。
関与する病態としては、慢性胃炎、消化性潰瘍、胃がん、MALTリンパ腫(悪性リンパ腫)などがあります。
●ピロリ菌(へリコバクター・ピロリ)の除菌治療方法は、どのような手順ですか?
慢性胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃MALTリンパ腫、早期胃がんの内視鏡的治療後、特発性血小板減少性紫斑病、慢性胃炎などの診断がある場合に、ピロリ菌感染が確認された場合、除菌治療は保険適用されます。ピロリ菌陽性だけでは治療の適応はありません。
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診断: 尿素呼気試験、便中抗原検査、血清抗体検査、または胃内視鏡検査(生検による迅速ウレアーゼ試験、培養検査、PCR法など)を用いて、ピロリ菌感染を検査します。
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一次除菌療法: 3種類の薬剤を7日間服用します。
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PPI/PCAB(胃酸分泌抑制薬) + AMPC(アモキシシリン、ペニシリン系の抗生物質) + CAM(クラリスロマイシン、マクロライド系の抗生物質)
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治療判定: 治療終了後、4週間以上経過してから再度ピロリ菌感染を検査します。
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二次除菌療法(一次除菌が失敗した場合): 3種類の薬剤を7日間服用します。
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PPI/PCAB(胃酸分泌抑制薬) + AMPC(アモキシシリン、ペニシリン系の抗生物質) + MNZ(メトロニダゾール、トロイミダゾール系の抗生物質)
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治療判定: 治療終了後、4週間以上経過してから再度ピロリ菌感染を検査します。
※注意事項: 除菌薬を飲んで終わりではなく、判定までは治療後も医師の指示に従い適切なフォローアップを行うことが重要です。 除菌治療には副作用がある場合があり、例えば下痢、腹痛、味覚異常などが報告されています。保険適用では二次除菌までしか認められていませんので、二次除菌不成功の場合は定期的な内視鏡チェックと炎症や生活習慣の見直しで胃に負担をかけないことが重要です。
● 胃がんのタイプについて教えてください
病理学的形態からは分化型胃がんと未分化型胃がんに大別されます。ピロリ菌感染により萎縮性胃炎〜腸上皮化生粘膜を母体として発生する場合、多いものが分化型胃がんとされます。他方、胃固有粘膜で萎縮がないか軽度のものから発生することが多いのが未分化型胃がんとされます。未分化型の場合は浸潤性が高く、若年層にも発症が認められます。
胃がん全体では、頻度的には萎縮性胃炎を母地として発生するものが多く、この観点からピロリ菌除菌が推奨されます。ピロリ菌陽性だけが胃がん発生の要因ではなく、ピロリ菌陰性者や除菌後にもがんは発生するため、ピロリ菌の観点だけから検査を決めるべきではありません。 食生活の乱れや慢性の炎症などに注意し、定期的に内視鏡検査を受けることが重要です。
●早期胃癌とは、どのような癌ですか?
早期胃がんの定義は、胃がんの病変が胃の粘膜層または粘膜下層に留まっている状態を指します。がんの深達度としては、腫瘍が胃の壁の粘膜層(M)または粘膜下層(SM)に限定されていることです。 筋層やそれ以上の深部には達していないことが条件です。固有筋層にまで達したものは進行癌となります。
早期胃がんはリンパ節転移がない場合が多いですが、定義にはリンパ節転移の有無を問わないため、リンパ節転移があっても早期胃がんとして分類されます。
形態的分類では以下のように細分化されます。
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0-I型: 隆起型
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0-IIa型: 表在隆起型
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0-IIb型: 表在平坦型
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0-IIc型: 表在陥凹型
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0-III型: 陥凹型
早期胃がんは内視鏡治療で治癒するものも多く、早期発見が何より重要です。
●ピロリ菌を除菌すると胃癌にならないですか。
ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)を除菌することは胃がんのリスクを減少させる効果がありますが、完全にがんを予防できるわけではありません。除菌後にがんが発生する場合もあります。
以下の点に注意が必要です。
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リスクの減少: ピロリ菌は慢性胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、さらには胃がんの主要なリスクファクターとされています。ピロリ菌を除菌することにより、これらの疾患のリスクが大幅に減少することが示されています。特に、若年時に除菌を行うと胃がんの発生リスクが著しく低下します。
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除菌後の注意: すでに慢性胃炎や腺腫性ポリープなどの前がん病変が存在する場合、ピロリ菌を除菌してもこれらの病変が残ることがあります。したがって、ピロリ菌を除菌した後も定期的な胃の内視鏡検査を受けることが推奨されます。また、胃がんの発生には食生活、遺伝的要因、喫煙、過度のアルコール摂取など、他のリスクファクターも関与していますので、ピロリ菌の除菌だけでなく、これらのリスクファクターに対する対策も重要です。
総じて、ピロリ菌の除菌は胃がんリスクを減少させる有効な手段であり、特に高リスクの人々にとっては重要ですが、完全な予防策とは言えないため、除菌後も内視鏡検査や他の健康管理も並行して行うことが必要です。
●大腸がんは日本では多いですか?
大腸がんは日本で非常に一般的ながんの一つです。大腸がんの発生率は日本で高く、男性では2位、女性では1位となっています。これは特に食生活の変化や高齢化が関係していると考えられています。
リスク要因は以下のようになります。
食生活: 高脂肪・高カロリーの食事や赤肉・加工肉の摂取は大腸がんのリスクを高めるとされています。
年齢: 年齢が上がるとともにリスクが増加します。
家族歴: 家族に大腸がんの患者がいる場合、リスクが高くなります。
炎症性腸疾患: 潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患もリスクを高めます。
予防と早期発見
定期検診: 便潜血検査や大腸内視鏡検査などの定期的な検診が早期発見に効果的です。
生活習慣の改善: バランスの取れた食事、適度な運動、禁煙、適量の飲酒が予防に寄与します。
治療方法
外科手術: 早期発見された場合、外科手術による治療が主流です。
化学療法: 進行した大腸がんには化学療法が用いられることがあります。
放射線療法: 一部のケースでは放射線療法が用いられることもあります。
大腸がんは早期に発見されると治療の成功率が高いため、定期的な検診が重要です。日本では公的な検診制度が整備されており、40歳以上の人々に対して定期的な大腸がん検診が推奨されています。
● 胃のポリープと大腸のポリープのどちらのポリープが癌になりやすいですか
一般的には大腸のポリープの方が癌化のリスクが高いとされています。ポリープとは、粘膜表面に発生した限局性の隆起した病変で、盛り上がって見える腫瘍の総称です。それ自体には良性・悪性という意味はありません。組織学的には腺腫、過形成、過誤腫、炎症性などが含まれ、成因によって腫瘍性ポリープ(腺腫)、炎症性ポリープ、過誤腫性ポリープ、過形成性ポリープなどに分かれ、このうち癌化するのは腺腫と呼ばれるものです。
大腸の腺腫は、特にサイズが大きいものや、高度異型成分を含むものが癌化する確率が高まります。定期的な内視鏡検査で早期発見・除去が推奨されます。
胃のポリープには胃底腺ポリープ、過形成性ポリープ、炎症性ポリープ、腺腫性ポリープなどがありますが、腺腫性ポリープ以外は癌化のリスクが低いとされています。胃の腺腫性ポリープは大腸の腺腫性ポリープと同様に癌化のリスクがありますが、大腸のポリープに比べると全体的なリスクは低いとされます。
したがって、一般的に大腸のポリープの方が胃のポリープよりも癌になるリスクが高いと考えられます。しかし、いずれのポリープも定期的な検査と適切な管理が重要です。大腸ポリープの場合、腺腫内癌の頻度は腺腫の直径が5mmを超えると5%強に認められ、大きさが2cm以上では50%以上と大きくなるほど癌化率が上がります。大腸の腺腫は管状腺腫、管状絨毛腺腫、絨毛腺腫の3つに大別され、大部分は管状腺腫と診断されます。これらは悪性化(癌化)すると、管状腺癌、管状絨毛腺癌、絨毛腺癌と呼ばれます。
●大腸がんの症状にはどんなものがありますか
早期癌では自覚症状がないのが普通です。ある程度進行すると、血便、腹痛、腹満感、便通異常、腹部腫瘤の触知、全身倦怠感、体重減少などがあります。
早期癌では出血はほとんど肉眼的に見えないため、便潜血反応検査で目に見えない血を捉える方法が大腸癌検診で行われます。しかしながら、便潜血反応は大腸がんのスクリーニングにおいて有効な方法ですが、検出感度は完全ではないため、他の検査方法と組み合わせて利用することが重要です。
2回法の便潜血反応の検出感度(がんが存在する場合にそれを検出する能力)は、大腸がんに対して約70%から80%とされています。つまり、大腸がんがある人のうち約70%から80%はこの検査で陽性反応を示します。 特異度(がんが存在しない場合に陰性を示す能力)は高く、約90%以上です。これは、がんがない人のうち約90%以上が陰性反応を示すことを意味します。
しかしながら、以上のことから偽陽性と偽陰性の存在が問題になります。偽陽性とは、便潜血反応で陽性反応が出ても、実際にはがんがない場合です(痔や消化器系の他の病変などがあります)。偽陰性とは、大腸がんがあるのに便潜血反応で陰性反応が出る場合です。このため、便潜血反応が陰性でも、50歳以上の方は定期的(少なくとも5年に1回)の大腸内視鏡検査が推奨されます。
便潜血反応では定期的なスクリーニングを行い、異常が見つかった場合はさらに詳細な検査を受けることが重要です。
●大腸の早期癌と進行癌はどう区別するのですか
大腸の粘膜は粘膜層、粘膜下層、固有筋層、漿膜層と内側から呼ばれます。癌は粘膜から発生し、次第に下に向かって(漿膜側へ)発育します。粘膜ないし粘膜下層までにとどまるものを早期癌、固有筋層よりも深く浸潤したものを進行癌といいます。
癌の深達度によって予後(5年生存率)や治療法に大きな差がありますが、早期の癌で粘膜内に留まっており、浸潤性の強い癌でなければ、手術(外科的切除)をせずに内視鏡的切除ができる場合が多いので、早期発見が重要です。
癌の深達度によってステージを分類します。 大腸の壁は5層になっており、内側から粘膜、粘膜下層、固有筋層、漿膜下層、漿膜となっており、深達度によって以下のようなステージに分類されます。 0期は早期癌でI-IV期は進行癌です。
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0期:粘膜〜粘膜下層まで
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I期:固有筋層まで
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II期:がんが固有筋層の外まで
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III期:リンパ節に転移あり
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IV期:多臓器への転移または腹膜播種
●大腸腫瘍の肉眼的分類(深達度やステージではありません)
大腸癌は肉眼形態により、0型〜5型に分類されます。
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表在型(0型):粘膜または粘膜下層までの癌で、隆起型と表面型に分けられる。
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腫瘤型(1型):腫瘍全体が塊状となり、腸の内側に出っ張っているもの。
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潰瘍型(2型):腫瘍が潰瘍を形成しているもの。
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浸潤型(3型):腫瘍が腸壁を浸潤しているもの。
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浸潤溝型(4型):腫瘍が腸壁を浸潤し、腸管内に溝を形成しているもの。
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浸潤壊死型(5型):腫瘍が腸壁を浸潤し、壊死を起こしているもの。
さらに0型(表在型)は早期がんに該当するので、早期大腸がんの分類は以下のようになります。
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0-Ip 有茎性
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0-Isp 亜有茎性
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0-Is 無茎性
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0-IIa 表面隆起型
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0-IIb 表面平坦型
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0-IIc 表面陥凹型
●内視鏡拡大観察による大腸ポリープのJNET分類
大腸ポリープは大きくなると悪性化しやすいですが、内視鏡観察である程度、悪性度、深達度、組織型が予想できます。 それにより治療方針を決定します。 ポリープの血管構造と表面の形状を拡大内視鏡で観察する方法です。 白色光で観察後、NBIやBLI特殊光で拡大観察します。 インジゴカルミンやクリスタルバイオレットなどの色素染色を併用することもあります。
その分類を示したものが大腸ポリープのJNET分類です。
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Type 1:
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Vessel pattern: 認識不可
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Surface pattern: 規則的な黒色または白色点
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予想組織型: 過形成性ポリープ、SSA/P
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Type 2A:
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Vessel pattern: 口径整、均一分布(網目、らせん状)
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Surface pattern: 整(管状、樹脂状、乳頭状)
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予想組織型: 腺腫・低異型度癌(Tis)
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Type 2B:
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Vessel pattern: 口径不同、不均一分布
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Surface pattern: 不整、不明瞭
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予想組織型: 高異型度M癌〜SM軽度浸潤癌(Tis/T1a)
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Type 3:
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Vessel pattern: 疎血管領域、太い血管の途絶
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Surface pattern: 無構造領域
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予想組織型: 高異型度癌(T1b〜)
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●胆石症は手術すべきですか?
胆石症の手術が必要かどうかは、患者の症状、胆石のサイズや数、合併症の有無、リスク要因などによって決定されます。症状がある場合や合併症(胆嚢炎、胆管炎、膵炎)リスクが高い場合や10mm以上のポリープや胆嚢壁の石灰化、大きな胆石などがある場合には手術が推奨されることが多いです。無症候性胆石の場合、通常は手術は不要ですが、特定のリスク要因がある場合は例外として手術が考慮されます。最終的な判断は医師と相談して行うことが重要です。
●胆嚢のポリープと癌
胆嚢のポリープと癌を区別することは診断上重要です。
胆嚢ポリープの特徴として、一般的に胆嚢ポリープの大きさが10mm以下のポリープは良性であることが多いとされています。良性ポリープは通常、均一な形態を持ち、表面が平滑です。内部エコーが均一であることも多いです。良性ポリープの1種であるコレステロールポリープは、エコー上で特徴的な内部に多くの小さなエコー反射(コメットエフェクト)を示すことがあります。成長スピードが遅いので、定期的なエコー検査で大きさの変化を観察することが有効です。
胆嚢がんの特徴としては、ポリープが10mm以上の場合、悪性(癌)の可能性が高くなります。特に20mm以上のポリープは要注意です。胆嚢がんは不規則な形態を持つことが多く、表面が不整であることがあります。また、内部エコーが不均一であることが特徴です。さらにエコー上で胆嚢壁の肥厚や周囲組織への浸潤が疑われる場合、悪性の可能性が高いです。これらの所見は胆嚢がんの診断に重要ですが、確定診断にはCTスキャン、MRI、ERCP、生検などの補完的な検査が必要です。
●膵癌(膵管腺癌)について
膵癌(膵臓がん)は膵臓に発生する悪性腫瘍で、早期発見が難しく、進行が速いため治療が難しいがんの一つです。膵管腺癌は膵臓の悪性腫瘍で最も一般的なタイプで、膵癌の約90%を占めます。膵管の細胞から発生し、進行が速く、早期にリンパ節や他の臓器に転移しやすい特徴があります。
膵癌の初期症状は非特異的であるため診断が遅れることが多いです。進行した場合の一般的な症状は、黄疸、腹痛、体重減少、消化不良や脂肪便、糖尿病の新規発症または悪化などです。膵癌の診断には複数の検査が必要です。 CTスキャン、MRI/MRCP、ERCP、EUS、血液検査、細胞診・組織診があります。
膵癌の予後は一般に悪く、5年生存率は低いです。 これは早期発見が難しく、診断時には既に進行していることが多いためです。しかし、早期に発見され、適切な治療が行われた場合、予後は改善される可能性があります。
●膵癌の診断 腫瘍マーカーについて教えてください
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CA19-9: 膵癌で最も広く使用される腫瘍マーカーです。膵癌患者の70-80%で上昇が見られますが、感度は中程度であり、特異度も完全ではありません。他の良性疾患(慢性膵炎や胆道疾患など)でも上昇することがあります。膵癌の診断補助、治療効果のモニタリング、再発の早期発見に利用されます。
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CEA: 大腸癌の腫瘍マーカーとして知られていますが、膵癌でも上昇することがあります。感度はCA19-9より低いですが、特異度は比較的高いです。膵癌の診断補助として使用されますが、主に他の腫瘍マーカーと併用されます。
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SPAN-1: 膵癌の診断に用いられることがあり、CA19-9と併用することで診断精度を高めることがあります。
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DUPAN-2: 膵癌患者の一部で上昇することがありますが、CA19-9ほど一般的には使用されません。
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Elastase-1: 膵臓の酵素であり、膵癌の診断に役立つ場合があります。
腫瘍マーカーには限界があり、腫瘍マーカーは完全に特異的ではなく、良性疾患や他の悪性腫瘍でも上昇することがあります。また、早期膵癌では腫瘍マーカーが上昇しない場合が多いため、早期発見には他の診断手段(CT、MRI、ERCP、EUSなど)との併用が必要です。
●膵管内乳頭粘液性腫瘍 (IPMN:Intraductal Papillary Mucinous Neoplasm) とは何ですか?
膵臓内の膵管に発生する腫瘍で、粘液を分泌する細胞が異常増殖して乳頭状の構造を形成します。IPMNは前癌病変とされ、進行すると膵がんに発展することがあります。
分類は以下のようになります:
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主膵管型: 主膵管の拡張(通常5mm以上)、悪性化のリスクが高い。
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分枝型: 分枝膵管の拡張(通常3cm以上)、分枝膵管が拡張し、嚢胞状の構造を形成。主膵管型よりも悪性化リスクは低いが、一定のリスクがある。
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混合型: 主膵管と分枝膵管の両方に特徴を持つ。悪性化リスクが中間的。
他の膵臓腫瘍や嚢胞性病変と鑑別する必要があります。漿液性嚢胞腺腫、粘液性嚢胞腺腫、膵管癌(膵がん)、膵内分泌腫瘍(PNETs)、膵充実偽乳頭腫瘍などが鑑別診断の対象となります。正確な診断には、画像診断、内視鏡検査、生検、腫瘍マーカーなどを組み合わせることが重要です。
●急性の便秘の場合どのような病気を疑いますか?
急性の便秘は、しばしば重篤な基礎疾患の兆候であることがあるため、迅速な診断と治療が必要です。
以下のような原因や疾患を疑うことが一般的です:
腸閉塞(イレウス):腸の一部が物理的に閉塞されることで、急に便の通過が妨げられることがあります。腸のねじれ、腫瘍、癒着、嵌頓ヘルニアなどが原因となることがあります。
腸狭窄:急激に発生する腸の狭窄が原因で、便の通過が困難になることがあります。これには炎症、潰瘍、腫瘍などが関与することがあります。
大腸がん:大腸がんが急激に進行して腸の通過を妨げる場合があります。
虚血性腸疾患:腸に供給される血流が不足することで、腸の機能が急激に低下し便秘を引き起こすことがあります。腸の血管が詰まることが原因です。
急性腹症:盲腸炎(虫垂炎)や膵炎、胆嚢炎など急性の腹部の炎症が原因で、腸の動きが低下し便秘が生じることがあります。
重篤な感染症:感染性腸炎や全身の感染症により腸の動きが急激に低下することがあり、下痢ではなく便秘になることがあります
薬剤の影響:新たに開始した薬剤(特に鎮痛薬や抗コリン薬など)が急性の便秘を引き起こすことがあります。
食生活の急激な変化:食物繊維の不足、水分摂取不足、食生活の急激な変化が急性の便秘を引き起こすことがあります。
急激なストレスや心理的要因:急性のストレスや不安が腸の運動に急激に影響を与えることがあります。
特に以下のような症状を伴う場合は、直ちに医療機関を受診することが重要です:
激しい腹痛、 吐き気や嘔吐、 腹部の膨満、 発熱、 血便または黒色便
急性便秘の原因を特定するためには、詳細な病歴の聴取、身体診察、必要に応じて血液検査や画像診断(X線、CT、MRI)、内視鏡検査などが行われます。
●炎症性腸疾患について
炎症性腸疾患(IBD: Inflammatory Bowel Disease)は、慢性的な腸の炎症を特徴とする疾患群で、主に以下の2つの主要なタイプがあります:潰瘍性大腸炎、クローン病。
潰瘍性大腸炎
潰瘍性大腸炎は、大腸と直腸の粘膜に限局した炎症を引き起こす疾患です。炎症は通常、直腸から始まり、連続して広がります。寛解と増悪を繰り返し慢性に経過することが多い病気です。大腸がんの発生にも注意が必要です。
症状:
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腹痛(特に左下腹部痛)
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下痢および血便
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便秘(特に炎症が直腸に集中する場合)
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体重減少
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慢性的な疲労感
大腸内視鏡検査所見: 直腸および大腸の粘膜の炎症や潰瘍で偽ポリポーシスを形成します。腸管自体は鉛管状変化をきたす場合があります。病理検査では陰窩膿瘍(crypt abscess)が特徴的とされます。
薬物療法:
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アミノサリチル酸製剤(5-ASA)
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ステロイド
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免疫抑制剤(アザチオプリン、メルカプトプリンなど)
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生物学的製剤(インフリキシマブ、アダリムマブなどの抗TNFα抗体)
手術: 重症例や薬物療法が効果を示さない場合に考慮されます。
クローン病
クローン病は、消化管のどの部分にも発生しうる慢性炎症性疾患ですが、特に小腸末端(回腸末端)と大腸に多く見られます。炎症は非連続的(跳躍病変)で、消化管の全層に及ぶことがあります。
症状:
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腹痛(特に右下腹部痛)
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下痢(血便は少ない)
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体重減少
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発熱
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肛門病変(難治性痔瘻)など
小腸・大腸内視鏡検査所見: 消化管の粘膜の炎症や潰瘍を確認します。skip lesion、縦走潰瘍、敷石状外観などが特徴とされます。他の検査ではCTスキャン、MRI、バリウム検査で消化管の狭窄や瘻孔を評価します。病理所見では全層性炎症、非乾酪性肉芽種性病変が特徴的とされます。
薬物療法:
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アミノサリチル酸製剤(5-ASA):軽症から中等症の治療に使用されますが、潰瘍性大腸炎ほど効果は高くありません。
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ステロイド:急性増悪期の炎症抑制に使用されます。
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免疫抑制剤(アザチオプリン、メルカプトプリンなど)
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生物学的製剤(インフリキシマブ、アダリムマブ、ウステキヌマブなどの抗TNFα抗体や抗インテグリン抗体)
手術: 狭窄、瘻孔、膿瘍の治療に必要な場合があります。
食事療法: 特定の食品を避けることで症状を軽減することができます。また栄養補助食品が栄養不足を補うために使用されます。
禁煙: 特にクローン病では禁煙が症状の管理に重要です。
ストレス管理: ストレスが症状を悪化させることがあるため、ストレスを軽減する方法を見つけることが重要です。
まとめ: 炎症性腸疾患(IBD)は、潰瘍性大腸炎とクローン病の2つの主要なタイプに分類されます。これらの疾患は慢性的な腸の炎症を引き起こし、腹痛、下痢、体重減少などの症状を引き起こします。
診断は内視鏡検査や画像検査、血液検査を用いて行われ、治療には薬物療法、手術、栄養管理が含まれます。定期的なフォローアップと生活習慣の改善が、病気の管理と生活の質の向上に重要です。