B型肝炎・C型肝炎
B型慢性肝炎もC型慢性肝炎もウイルスによる持続感染 (一過性感染もあり)が原因ですが、肝硬変・肝臓がんに移行することもあり、難治性の点で問題になっています。B型肝炎・C型肝炎は日本人の50-100人に一人が罹患しており、治療の進歩により早期発見・治療を受ければかなりの確立で、コントロール~排除できる状況になってきました。
●ウイルス性の急性肝炎の原因は、今でも多くはB型肝炎によるものであり、特に性的感染によるものでは遺伝子型AのB型急性肝炎が増えており、キャリア化することもあるので注意が必要です。
●B型肝炎に対してはワクチンがあり、3回接種法が基準となっています。
⇒当院でB型肝炎ワクチン接種は可能です.
●B型肝炎に関連する肝臓がんは、治療の進歩にかかわらず減少傾向にありません(C型肝炎によるがんは減少傾向)。
B型肝炎はウイルス完全排除が困難ですが、内服薬継続によりほぼコントロールできるようになってきています。
B型肝炎ウイルス陽性の方は、肝硬変や肝がんへの進展を防ぐため、一度は専門医にご相談ください。
●C型肝炎はウイルスが従来は難治性でしたが、現在では、経口薬でほとんど治るようになりました。
●しかし、C型肝炎と判明しても自覚症状がない、多忙であるなどの理由で放置し、肝硬変・肝がんに移行するケースがあります。
C型肝炎の内服(経口薬)治療
H26年秋から、C型肝炎の経口内服薬(DAA製剤)による治療(インターフェロンフリー治療)が始まり、今まで治療困難だった多くの肝炎の方が恩恵を受けています。その治癒率の高さ(初回治療で95%以上)や副作用の少なさでインターフェロン治療に置き換わる治療になっています。代償性肝硬変の方にも使用でき、治療法は大きく飛躍しました。この治療は、週1回の通院で12週~16週の経口薬治療で、当院でも多くの方の治癒実績があります。費用の点でも肝炎助成制度での申請が可能ですのでご相談ください。
肝炎医療費助成制度について
C型肝炎の経口薬治療 ( 当院でのインターフェロンフリー治療)について
C型肝炎ウイルスは、経口直接作用型抗ウイルス薬(DAAs)により排除できる方法が確立されています。 HVCウイルスの遺伝子(RNA)は、ウイルス本体をコードする構造領域(コア領域など)とウイルス複製・増殖に必要な蛋白(プロテアーゼやポリメラーゼ)をコードする非構造領域(NS3,4,5などと呼ばれる)に分かれます。経口直接作用型抗ウイルス薬(DAAs)は、ウイルスの増殖機構に介入し、非構造領域の蛋白合成阻害剤と直接核酸の合成阻害剤の併用・組み合わせにより、経口薬のみの治療でウイルス増殖を阻止して排除するという方法です。令和6年6月時点で選択できるDAAs治療は以下です。
①グレカプレビルGLE/ピブレンタスビルPIV配合錠(マヴィレット)
②レジパスビルLDV/ソホスブビルSOF配合錠(ハーボニー)
③ベルパタスビルVEP/ソホスブビルSOF配合錠(エプクルーザ)
④エプクルーサ及びリバビリンRBV併用療法(エプクルーザ・リバビリン
DAAs治療薬は、新薬開発や効果・耐性・副作用の点で入れ替わりがあり、ここ数年での動きはようやく落ち付いた感があります。治療薬の概要のまとめを表に示します。
(1)マヴィレット:遺伝子型1-6, 慢性肝炎8W(初回)/12W(再投与), 代償性肝硬変12W(初回および再投与).
(2)ハーボニー(初回):遺伝子型1-2,慢性肝炎12W, 代償性肝硬変12W.
(3)エプクルーザ(初回):遺伝子型1-6, 慢性肝炎12W, 代償性肝硬変12W, 非代償性肝硬変12W.
(4)エプクルーザ・リバビリン併用療法(再投与):遺伝子型1-6, 慢性肝炎24W, 代償性肝硬変24W.
B型慢性肝炎の治療
B型肝炎ウイルスはC型肝炎ウイルスと異なり、慢性肝炎の患者(ウイルス持続感染者)において、ウイルスを完全に排除できる治療法は確立されていません。 治療の主眼は、肝炎の進展を抑えること、肝がんの発生を減らすことであり、そのためには、ウイルスを減らすことのできる免疫抵抗力を高めること、ウイルスの増殖を減らすことが治療の内容となります。 大別すると、インターフェロンを介した治療法と、逆転写酵素阻害薬を用いてウイルスの増殖を減らす方法(核酸アナログ製剤治療)にわけられます。慢性肝炎患者は、自然経過でウイルスを減らすことのできる肝炎が非活動性に向かうグループと、ウイルス増殖が強く、肝炎が進行性のグループに分かれます。HBe抗原が血液中で陽性かどうかは、一つの指標として重視されます。35歳くらいまでにウイルス減少・鎮静化に向かわない患者には、ペグインターフェロン(PegIFN)で、抵抗力を高め、直接的・間接的にウイルスを減らす方法があり、またウイルス量が多く肝炎の活動性が強い、年齢が比較的高齢である患者、病態が進展した患者には、最初から核酸アナログ製剤治療(原則的に生涯内服)を導入します。
①核酸アナログ製剤治療
B型肝炎の逆転写酵素阻害薬である核酸アナログ製剤としては、ラミブジン(LAM, ゼフィックス), アデホビル(ADV, ヘプセラ), エンテカビル(ETV, バラクルード), テノホビル ジソプロキシル(TDF, テノゼット), テノホビル アラフェナミド(TAF, ベムリディ)の5製剤が、今までに認可されています。LAMは耐性が出やすく、その場合はADVとの併用療法がおこなわれてきましたが、耐性の出にくいETV, TDF/TAFが第一選択薬として推奨されます。TDFとTAFは、活性型TFVの前駆体ですが、腎や骨の安全性でTAFが優れるとされています。原則飲み続ける薬ですが、内服なしでも, HBV DNA 量 2,000 IU/mL(3.3 LogIU/mL)未満を達成できれば、核酸アナログ製剤は休薬可能と判断されます。
②インターフェロン治療
インターフェロン治療は、B型慢性肝炎の治療でかなり歴史がありますが、核酸アナログ製剤のように継続投与を前提にしていない治療法です。宿主の免疫力を高めるという点で、HBe抗原・抗体系のセロコンバージョンやdrug-freeを目標とした治療です。効き目の点で核酸アナログ製剤ほどの速効的効果がないため、若年の経過を見れる患者で使用したり、核酸アナログ製剤と併用する場合が多いようです。ペグインターフェロンが導入されてから、HBs抗原が消失する場合(ウイルス排除)もあるので、核酸アナログ製剤とは違った作用機序を有する治療として、肝臓学会のガイドラインでは、この治療法を積極的に見直す方向になっています。